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観たい映画三作品について

今、受験指導のさなかであるというのに、観たい映画がある。
1つ目は、「ラーゲリより愛を込めて」。
これは、日本人なら観ておかなければならないよなあ、と思ってきた。でも公開されてから、私は受験指導でいっぱいな時期だったので、とても観に行く時間がなかった。
収容所にいた人が周りに全くいないというわけではない世代である。
友人のお父様はシベリアに抑留されていた、ということを友人は実にサラッと言っていたけれど、遠くドイツやポーランドで、ユダヤ人が迫害されていたり、満州で日本人が行っていた残虐なことがあったのが、両親がもう生を受けていた時代に起こったことであったことを思い、とんでもなく沈痛な思いになっていた時期もあった。
彼女は阪神大震災で弟さんを亡くしていた。
どんなことも我が国に起こり、知りえることは国民として、きちんと知っておかなければ・・・、と思う。
それも身近に感じやすい映画という芸術の中で表現されるならなおさらである。
当然原作も読むべきだと思っている。
べき、べきと言っているけど、正直観ておきたい。

それから2つ目は、「別れる決心」。
これは、「ラスト・コーション」という、これも日本と中国の国家間の対立の中での愛を描いたものであったが、新人でありながら、香港の名優トニー・レオンの相手役を見事に務めたタン・ウェイが主演である。
この人は、非日常的な状況の中での男女の愛についての葛藤を描かれる作品での演技が光る女優さんなのだろうか?
「ラスト・コーション」ではありえない状況下で男女が愛し合うさまを絶妙に描いていた。
冷徹な男性が徐々にタン・ウェイ演じるマイ夫人に溺れていくさま、そして、親日派である男性を殺すことこそが使命であり、ほかに愛する人もいながら、関係を持ち、長く接している間に情愛が湧き、さて、暗殺する、というときになって、自分の心の中にいつしか芽生えていた愛によって発する言葉で、彼女とその仲間は死刑になり、そして、その男は生き延びる。
その辺りに理性では割り切れない男女の愛と、なんとも言えぬ葛藤が描かれる。
だから、「別れる決心」という、殺害された男性の妻と、警官との愛であり、そもそも愛が始まるときから相手を疑わなければならにような状況の中で、その互いの心がどのように揺れるのかというところが見ものである。

そして、最期に、イケメンちゃうやん・・・、と言いながら、奥さん10歳上やったら、私でもよかったやん・・・(奥さんは有村架純に似た美人だから、ムリムリ。(笑))と言って、生徒に、
言うと思ったわ・・・。
と呆れられたほどの、ファンなのかどうなのかわからない、関西出身の鈴木亮平と宮沢氷魚主演の「エゴイスト」。
2人が愛し合う男性として描かれている。
出版社の編集者とジムのコーチという設定も面白く、年齢差も体型の対比も、そしてルックス全体としても、そして知性の上でも見るものがあるだろうと思っている。
公開された日は、ああ、なんとか行きたい、と思って、そわそわしていた。まだ一週間も経ってないけど。
宮沢氷魚演じる龍太の母が阿川佐和子だというのも気になる。女優としてよりエッセイストとして、そのユーモアのある文章が好きだったり、名司会者としての、『聞く力』の筆者であることのイメージが強かったけれど、どんな演技をされるのだろう?

そこで、思い立ち、映画館に行けないのなら、せめても原作を読みたいと思い、売り切れの文庫本ではなくて、kinndle版で、サッとダウンロードし、仕事の終わった後の教室で、サラッと読んでしまった。
高山真という人の実体験を基にした作品である。
映画化が決まってから鈴木亮平さんは、高山さんに会うことはなかったという。なぜなら、本当に直前に亡くなられていたのだそうだ。
憑依型俳優と呼ばれる鈴木亮平さんは、ゲイとして、主人公浩輔が出会うであろう可能性のある人とできるだけあるようにしたそうだ。
鈴木亮平さんのインタビューを読んでいると、愛はエゴを含む・・・、という表現があり、もちろん愛にはエゴが含まれることは百も承知でありながら、いったいどういうことを指して言っているのだろうか?と思い、どうしても読んでみたくなったのである。
読んでみたら、その意味がわかった。
正直、この作者である高山さんは、救われないな、と思った。
ものすごく真っ直ぐな書き方であるにもかかわらず、それは単調な心情描写に思えたりもするが、エゴについての掘り下げ方は、これからの文学をやるものとしては、一考に値すると思われる。
得意な文学作品か?と言われれば、もう少し書きようがないかなあ?と思わされるところもある。
同じ性愛を描くのでも、山田詠美などは唸らされるうまさ、どうしようもなさがあるけれど、内容としてはどこかに余韻の残るものではあるが、言ってみれば浩輔が理性的すぎて、まっすぐだからこその悲劇のようであり、どこか筋立てがシンプル過ぎる。ゲイであることの苦悩もあまりにサラリとしているように思う。
時代性かな?
でも、龍太を宮沢氷魚が演じるということには納得で、読んでいる間、ずっと浩輔は鈴木亮平で、龍太は宮沢氷魚だった。
むしろ愛に純粋なのは龍太に思えるところもあるし、浩輔のエゴはわかる。
でも、この関係でもって『エゴイスト』というタイトルは、あまりにエゴイストにはならないような気がする。
と自分は書けるわけでもないのに、偉そうに言ってみる。
思えば、偉大な作家先生の作品を、ああでもない、こうでもない、と作品論に明け暮れた学生時代は、今よりもっと偉そうだったに違いない。(笑)
できもしないことを、ああだこうだというのが人間でもある。
とりあえず純愛ではある。
映像が美しいだろうな。
それに美しい男性の肉体美も、鈴木亮平と宮沢氷魚の愛を語り合う声もそれはそれは甘美なものであろう。

宮沢氷魚が、インタビューで、鈴木亮平の横で、階段で浩輔を呼ぶシーンで、何度目かのテイクのあと、監督に
「『浩輔さん』ではなくて『亮平さん』と呼んでみて。」と言われて、「亮平さん」と呼んでみたときの、鈴木亮平の戸惑う顔が・・・、とあったけれど、本当に鈴木亮平の、何度目かのテイクで、ちょっと慣れてきてしまっていたのに、その意外な顔が良かったらしい。
ああ、観てみたい。
もしかしたら、やっぱりこの作品は、映画の方がいいのかもしれない。

あああ、観たい。

以前、予備校の同僚が、センター試験と二次試験の間に映画を観に行っていた、ということを聞き、
ふざけてるの!?あなた!
と叫びそうになったけれど、考えてみれば、指導がよりよいものになるのなら、それも良いことなわけで・・・。
実は、一昨日、数学を解いていて、ああ、いつもほど頭が回っていないな。
と思い、数学のために寝ます!と宣言し、昨日は、18時出勤にさせてもらった。
そしたら、誰よりも数学の難問が速く解けたので、この判断は良かった、と思った。
一見不真面目そうですが、これも講師の自分との付き合い方ですので、どうぞご理解を!

公開:2023/02/22 最終更新:2023/02/22